がんに対して、手術、放射線、薬物に次ぐ第四の療法として注目されている免疫療法。ボストンの研究所では、多くの研究者がしのぎを削りながら免疫療法の創薬に取り組んでいます。
チャレンジの舞台を湘南からボストンへ
入社当初は、湘南の研究所で4年間、自己免疫疾患を対象としたプロジェクトの薬理業務を担当していました。その後、研究開発部門のトランスフォーメーション(組織変革)が実施され、湘南ではニューロサイエンス(神経・精神疾患)と再生医療の研究、武田ボストンの研究所では消化器系疾患とがんの研究に、集約されることになりました。そのなかで、日本の研究者にもボストン研究所へ異動するチャンスがあり、社内公募が出た際にまっ先に手を挙げたのです。2017年以来、ボストンで研究の日々を送っています。
現在携わっている研究はがんの免疫療法です。簡単にいうと、人間の体に備わっている免疫系システムを活性化させることでがん細胞を攻撃しようというもので、昨今、注目を集めている療法です。もともと、将来は「薬をつくりたい」と思い、大学では免疫学を学びました。免疫は、人間の体が快適な状態を保とうとする恒常性維持に必要であり、さまざまな疾患に関わっているところが興味深く、そこに可能性を感じたからです。タケダに入社したのは、免疫学を活かして創薬に貢献したいという想いがあり、また海外で働くことも視野に入れていました。
研究を支えるタケダイズム
ボストンという都市は創薬研究が盛んで、世界的に著名な研究者の講義が聞けるなど最先端の情報に触れることができます。そんな環境で、タケダのオンコロジー(腫瘍学)部門は、「患者さんにインパクトのある薬をつくろう」とたくさんの研究者が情熱を注いでいます。臨床という治療の現場を踏まえ、いかにテクノロジーベースで他社を超えてトップに立ち、多くの患者さんの力になるのか。そのための明確な戦略があり、それに沿って個々の研究者が切磋琢磨している。実は、ほとんどの研究成果は創薬まで直接に結びつかないと言われていますが、新たな知見の積み重ねや掛け合わせの一つひとつが決してムダにはならないと信じています。