2023年1月27日
タケダのオーストリア、ウィーンにある製造拠点で環境・衛生・安全(EHS)、サステナビリティ、エシックス & コンプライアンスを担当するクリスチャン・ブグルは、「環境」と「データ」という 2 つの重要なテーマに強い信念と情熱を持って取り組んでいます。彼は 2009 年に同拠点でエンジニアリング部門を率いていた際に、エネルギー使用量を削減する余地があることに気づき、高度なエネルギー使用量追跡システムを導入しました。13 年後の現在、同拠点では、ガス、電力、廃棄物、熱の使用状況について、1 日あたり 13 万 3,000 件のデータポイントを収集しています。
「私たちが目指すのは、世界中の患者さんにお届けできる最大限の量の製品をお届けする一方で、環境への影響を最小限に抑えることです。単に環境の持続可能性を目標として掲げるだけではなく、確かなデータをもとに毎日、毎週、毎月のエネルギー使用状況を確認し、システムを最適化しています」と、ブグルは言います。
ウィーンの製造拠点は、世界中のタケダの製造拠点の中でも最大規模を有します。5 つの独立した製造エリアがあり、その一部は複数の建物で構成されています。ブグルのチームが環境とデータの取り組みを始めて以来、効率が大幅に向上しました。既に稼働しているCO2ニュートラルエネルギーセンターでは、高効率でCO2を排出しない、100%自然冷媒を使用しており、ウィーンの主要製造拠点で30%以上の温室効果ガス削減を実現しています。また、エネルギーセンターは現在、温水と冷水を生産しており、将来的には蒸気も生産し、長期的なサステナビリティ・プロジェクトの基礎となる予定です。
そして今、ウィーンの製造拠点は、これまでで最も大幅なエネルギー削減を実現しようとしています。タケダは 1 月 25 日(水)、オーストリアで初めて先駆的な蒸気発生ヒートポンプを生産工程に導入する研究プロジェクト AHEAD(Advanced Heat Pump Demonstrator)を発表しました。本プロジェクトでは、ウィーンにある主要製造拠点において、自然冷媒のみを使用した最大 90% の二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指しています。
医薬品製造には大量のエネルギーが必要であり、これまでは化学的・生物学的プロセスを開始して無菌製造環境を確保するために必要な熱と蒸気の大部分が、天然ガスによって作り出されてきました。AHEAD プロジェクトでは、天然ガスをヒートポンプに置き換え、冷却システムの余熱を再利用して加熱を行います。ヒートポンプは約 120℃ までしか加熱できないため、蒸気圧縮機を併用して製造に必要な蒸気供給の温度である 184℃ の蒸気を発生させます。
本プロジェクトは、タケダ、オーストリア政府、オーストリア技術研究所(AIT)が連携して進めています。プロジェクトの一環として、オーストリアおよび世界にある他のタケダ拠点にも AHEAD システムを導入するためのコンセプトを策定します。本プロジェクトは製薬業界やその他の業界に好例を示すとともに、地球環境に大きくポジティブな影響を与える可能性があります。
AHEAD プロジェクトは 2024 年末に運用を開始する予定です。ここまで漕ぎつけることができたのは、血漿の調達、研究開発、製造、患者さんへの供給に至るまで、製薬のバリューチェーン全体を網羅するオーストリアの製造拠点において、環境の持続可能性に独自の視点で取り組み、所属や役割を超えて組織横断的に革新的なアイディアを出し合ってきた従業員の皆さんのおかげです。
「すべてはチームワークの成果です」と、ブグルは言います。「すばらしいことに、オーストリアには 4,500 人もの従業員がいて、その全員がより持続可能な社会を実現したいという熱意を持っています。オーストリアではとても多くの人が、持続可能であること、自然を大切にすることを重要視しているのです」
タケダは企業理念において、いのちを育む地球を守ることを約束として掲げています。そしてその一環として、オーストリアの製造拠点では、AHEAD プロジェクトの他にも、より持続可能な社会を実現するための革新的なプロジェクトを展開しています。これらのプロジェクトは、世界中の人々と地球の健康を改善すると同時に、2035 年までにタケダの事業活動における温室効果ガス排出量をネットゼロにするという目標の達成にも寄与します。
例えば、ウィーンの製造拠点では 2022 年に、医薬品製造用の血漿をエミッションフリー(有害なガスを一切排出しない)の電気トラックで輸送するパイロットプロジェクトを開始しました。
タケダでは、新しい投資を行うたびに、それを利用して事業の環境負荷を低減することができないかを検討しています。例えばウィーンでは、製造拠点の建物の一つが、省エネと環境に配慮した建物・敷地利用を評価するグリーンビルディング認証システム LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)のゴールドカテゴリーを取得しました。新しい研究開発ラボは、太陽光、地中熱(サーマル)、地下水、地域熱供給を組み合わせて、温室効果ガス排出量ゼロで運用される予定です。
環境の持続可能性を追求することは、従業員のウェルビーイング(心身の健康維持)にもつながります。オルト/ドナウの拠点では、従業員が屋外で休憩時間を過ごしたり、ミーティングを行ったりできるように、コミュニティガーデンを作ったほか、蜜蜂の巣箱を設置しています。蜜蜂の巣箱設置は、花の開花に寄与するなど、環境保全に役立つのです。最近、ウィーンの拠点にも蜜蜂の巣箱が設置され、リンツの拠点でも長期的に蜜蜂の巣箱を扱う団体とのパートナーシップを結びました。サステナビリティのさまざまな側面に取り組む従業員グループ「グリーンチーム」が、拠点の建物内にある幼稚園の子どもたちに環境保護の重要性を教えるために蜜蜂の巣箱が環境に与える好影響を説明するなど、地域活動にも活用しています。
このように、会社、従業員、そして地域社会の間にバランスのとれた良好な関係を築くことこそが、10 年以上前にブグルと彼のチームが取り組みを始める上で目指した姿です。
「私たちが行うことはすべて、常に持続可能な形で行うことが重要なのです」と、彼は言います。