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前進、展望、そして進むべき道:タケダのウェーブ1パイプラインの詳細

USビジネスユニット プレジデント ラモナ・セケイラ


私は、少なくともCOVID-19に対する2つのワクチンが接種可能になったことで、多くの方々と同じく、ようやく慎重ながらもこの先を楽観視できるようになりました。トンネルの先に希望の光が見えています。米国食品医薬品局(FDA)や米国国立衛生研究所(NIH)などの米国当局とバイオ医薬品業界との連携により、わずか1年間で複数の治療薬と2つのワクチンが開発・承認されたことで、改めて医学の可能性に驚かされました。新政権下で製薬企業と行政が迅速に連携し、希望する方々全員にワクチンが接種されるものと確信しています。

それと同様に、製薬業界が結集し、研究やイノベーションの速度を最速レベルに保ちながら、世界的なパンデミックに対応していることは非常に素晴らしいことだと思います。当社は、一般的な疾患から希少疾患まで、様々な疾患に対する画期的治療薬を探求し続けてきました。当社が、世界レベルの研究開発組織を構築するために行った投資、患者さんのニーズを探索し患者さん個々に合わせた治療薬を開発するために行っている投資は実を結び始めています。この10年間で、高いアンメット・ニーズを有する患者さんの生活に革新的な変化をもたらすことのできるパイプラインを上市してきたことを誇りに思います。


すべては患者さんから:Zachの物語

残念なことに誤解や誤診されることの多い疾患に罹患する患者さんの実体験を理解するため、職場の仲間が、そして私自身も、患者さんとお会いする機会を頻繁に設けています。どの患者さんの経験もユニークなものですが、多くの患者さんに共通するのは、治療選択肢が極めて少なく、多くの場合、1人で何も言わず苦しんでいることです。

ここで、Zachさん(22歳)の体験をご紹介します。Zachさんは、食道に局在する免疫が関連する慢性の炎症性疾患である好酸球性食道炎に罹患しています。食事中に食べ物が喉に詰まりだしたのは、Zachさんが12歳の時でした。Zachさんは、好酸球性食道炎と診断された後の生活を、「人生で一番ひどい食事を思い浮かべてください。そして、そのひどい食事だけを1日3回、毎日食べるように言われていることを想像してみてください」と表現しています。Zachさんが「食事」と説明したのは、好酸球性食道炎の患者さんが必要な栄養素を摂取できるように医師や栄養士が使用している成分栄養剤のことです。好酸球性食道炎では、食べ物を細菌やウイルスのようなものと誤認識し、白血球がそれを攻撃する結果、嚥下困難や腹痛、悪心などの症状が起こります。

診断から10年たった今も、Zachさんの治療には多くの課題があります。まず、強いバニラ風味の栄養剤を、嘔吐せずに消化させなければいけません。最終的に彼は、味を感じないよう栄養チューブを使用することにしました。また、好酸球性食道炎になると社会的課題も発生します。食べ物を食べられなくなると、休日やデート、友人や同僚とのランチ、家族とのディナーなど、ほとんどすべての社交の場が食事中心であることを改めて実感します。さらに、食べ物を味わうことのない、食感のない生活を送るという精神的負担を負うことにもなります。食べ物は、もはや楽しいものではなくなり、生き続けるために我慢すべきものとなってしまうのです。

このような障害にもかかわらず、Zachさんは競泳選手となりました。また、教会で布教活動にも参加し、ブリガムヤング大学に通い、好酸球性食道炎の患者会のポッドキャストを主催しています。彼は恋人と初デートした1周年記念日に結婚しました。初デートでは、外出中に合併症が発症したため途中でデートをキャンセルしそうにもなりました。現在、Zachさんは、最近好酸球性食道炎と診断された子どもたちに寄り添うために、CURED(好酸球性食道炎の研究促進を訴えるキャンペーン)でボランティア活動にも参加しています。

Zachさんのような話を耳にすると、彼のように患者さんに寄り添うことは、単なる仕事ではなく天から与えられた使命、天職なのだということに気付かされます。これはタケダの従業員全員が持っている考え方です。Zachさんから学んだように、治療薬のない毎日は、苦しみに満ちた毎日でしかないのです。だからこそ、好酸球性食道炎に対する治療薬候補であるTAK-721がFDAからブレークスルーテラピーおよびオーファンドラッグに指定され、さらに優先審査に指定されたことは非常に喜ばしいことなのです。もしこの薬が承認されれば、Zachさんのような患者さんや医師などは、この疾患に対して初めて承認された治療薬を手にすることになります。


得られた知見を行動に変える

今後数年間で、当社は最大で12の新規候補物質の承認を取得する可能性があり、ファースト・イン・クラスの治療薬を通じて何十万人の患者さんの人生に影響を与える可能性があります。タケダの主要な疾患領域(がん、神経精神疾患、消化器系疾患、血漿分画製剤など)での治療薬開発に加え、当社のワクチン候補は、喫緊に差し迫った地域的な医療危機であるデング熱に対処し、流行地域で感染を制御し、その地域を訪れる旅行者を守ることができます。

患者さんの医薬品へのアクセスと持続可能なビジネスの成功を実現することは、製薬のビジネスモデルにおける不可欠な要素であり、強力なパートナーシップによってはじめて達成可能です。タケダでは、営業組織と研究開発組織が緊密に連携し、革新的な医薬品を開発するとともに患者さんにお届けしています。

患者数によって治療法や治療薬開発への投資を決めるべきではなく、また、患者数は、その疾患の患者群の医薬品や治療への支払い能力とすべきでもありません。そのため、当社は、年間数百万人が罹患する疾患(デング熱など)、数十万人が罹患する疾患(炎症性腸疾患など)、そして比較的少人数しか罹患しない(しかし増加傾向にある)疾患(好酸球性食道炎など)の治療薬開発に挑んでいるのです。以下の4つに当てはまる事業モデルを有していることが、私たちがこれまで成功を収め、そして今後も成功し続ける要因です。

  • シームレスな連携-部門間のシームレスな連携により、医薬品の研究開発から販売、必要に応じた生産の拡大縮小を迅速に行います。
  • 実臨床下のエビデンス-医療関係者や保険者と連携し、あるいは医療制度を活用することで実臨床下のエビデンスが生みだされ、さらに臨床現場にそのエビデンスの情報提供を行うことで治療方針を改善することができます。例えば、実臨床下における5年以上のEntyvio使用データの詳細な解析により、Entyvioは、既存の適応症において一次治療として有効な生物学的製剤であることが証明されました。
  • 患者さんへの貢献の拡大-患者さんへの貢献は、患者さんの実体験によって拡がり、患者さんと介護者を支援するプログラムやサービスを創出する貴重な知見を導き出してくれます。
  • 価値に基づく合意および価値に基づく医療の価格設定-データや分析により、患者さんにとって最も望ましい治療の結果(アウトカム)に主眼を置くものです。例えば、直近のPrime Therapeutics社との提携は、救急外来の受診、治療薬であるアドベイトなど、高額な血友病治療費を考慮してのものです。医療関係者、バイオ医薬品企業、保険者は、投資やインセンティブ報酬を共有することで、患者さんの医薬品アクセスを改善するよう、また、費用負担能力が治療の妨げとならないよう連携します。

 

未来へ向けての前進

前進とは、忍耐力、持続力を伴い、好まない現実が待ち受けていることを認識せざるを得ない時もあり、ゆっくりとした着実な歩みです。日々従事している業務に、当社の革新的で興奮に満ちたパイプラインに、「1. 患者さんに寄り添い(Patient)2. 人々と信頼関係を築き(Trust) 3. 社会的評価を向上させ(Reputation)4. 事業を発展させる(Business)」という当社の価値観や原則を常に遵守しながら利益を還元していく私たちの力に、そして従業員を大切に考え投資する当社の取り組みに、私は今も感銘を受け続けています。「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」という究極の使命を果たすために、当社は持続可能な医療制度の創出において重要な役割を果たしています。

ウェーブ1パイプラインのうちの2つであるTAK-721およびTAK-003の最新のデータや最新情報を含むプレゼンテーションのスライドなど、ウェーブ 1パイプラインの市場機会に関するカンファレンスコールにかかる情報は、IRイベントおよびニュースリリースをご覧ください。