毎年3月8日は国連が定めた「国際女性デー(International Women's Day:IWD)」です。女性の社会的、経済的、文化的な功績を称える様々なイベントが今年も世界各地で開催されました。これまで100年以上にわたり、性差別の無い、ジェンダー・バランスのとれた環境の実現に向けて、様々な取り組みが行われてきました。結果、多くの進展が見られましたが、エクイティ(公正)とインクルージョン(包摂性)を高めるためには、取り組むべき課題が多くあります。
世界経済フォーラムが発表した「世界ジェンダー・ギャップ報告書2020」によると、現在の進捗率では、男女平等の達成まで99年以上かかると見込まれています。加えて、新型コロナウイルスによる影響が、男女共同参画への歩みをさらに後退させています。このデータ自体はポジティブなものではありませんが、変革を加速させる機会であると前向きに捉え、行動に結びつけることも可能です。
今年の国際女性デーのキャンペーンテーマは「#ChooseToChallenge(挑戦することを選ぶ)」です。このテーマは当社の価値観であるタケダイムズや、DE&I(多様性、エクイティ、インクルージョン)の理念とリンクしており、タケダの「声を上げる(Speak-up)」文化の醸成とともに、従業員が積極的に偏見を無くし、互いの経験やストーリーを共有しながら対話することを促しています。
タケダには、共通のアイデンティティー、経験、目的の下に集い、部門の垣根を越えてコミュニティーを作る従業員主導型のネットワーク活動である「タケダ・リソース・グループ(TRG)」があります。国際女性デーを機に、この中のひとつ、ジェンダー平等を目指すチームが中心となって、2日間にわたり世界規模で20以上の社内イベントをオンラインで実施しました。スピーカーにはタケダのリーダーシップチームやDE&Iのリーダーに加え、ヘルスケア、IT、スポーツなど様々な業界からゲストスピーカーを招いて、広く知見を共有していただきました。ジェンダー平等について Speak-up すること、ジェンダーによる不均衡を是正するためにアライ(協力者・支援者)として男性がどう関わるか、COVID-19が働く女性に与えた影響など、幅広いテーマが取り上げられました。ここでは、その中からいくつかハイライトをご紹介します。
基調講演では、起業家であり、母親であり、科学者であり、Affectiva(アフェクティバ)社のCEO兼 共同創立者、ラナ・エル・カリウビィ博士にご登壇いただきました。カリウビィ氏はMITメディアラボにて感情センサーおよび顔表情分析のアプリケーション開発に注力し、2009年にAffectivaを創立。著書に「Girl Decoded」があり、Speak-upする」ということは、居心地が良い「コンフォート・ゾーン」から一歩外に出て、自分の可能性を疑う気持ち(自己不信)を克服することだと言います。たとえすべての項目をクリアできなくても、その先にある大きな目標に向かって歩んでいく自信をつけるために「挑戦すること」なのだと。タケダではジェンダー・バランスのとれた、互いに認め合うことのできる職場づくりに取り組んでいますが、変化をもたらすためにはまず従業員から始めることが大切です。簡単なことのように思えるかもしれませんが、率直でオープンな会話をし、異なる意見に積極的に耳を傾けることが重要な第一歩となります。そうすることが、あらゆるバックグラウンドを持つ従業員が、自分の意見を述べることができ、自分らしくいられるような、インクルーシブ(包摂的)な職場環境を作ることにつながります。組織内や業界全体での信頼を確立することで、固定観念に挑戦し、偏見に向き合い、認識を広め、女性の功績を称える、より生産的な議論ができるようになります。
より多様性に富み、公正でインクルーシブな世界に向けて前進するためには、小さな一歩と、大きな一歩の両方が必要です。私たちは、タケダが果たすべき役割と、製品・サービスをお届けするすべての人々(患者さん、地域社会、取引先、従業員)のことを考える際に、常にDE&Iの視点を持ち行動します。
職場環境について考えるとき、多様性はタケダの従業員を構成するものであり、エクイティは方針とプロセスの根幹をなすもの、インクルージョンは多様性や異なる考え方を受け入れることだと捉えています。企業が持続的に発展していくためには、ジェンダー・バランスの実現、男女共同参画が欠かせません。多様な声が集まれば、創造性や革新性が高まり、パフォーマンスの向上や、チームの士気を高めることにもつながります。
DE&Iを実現するためのセッションでは、タケダの従業員とリーダーが、変化を促し、より多様な人材の活躍を後押しするための具体的なアクションについて語り合いました。そのためには、現状を打破するために適切な質問をすること、お互いに責任を負うこと、リーダーシップを発揮して明確で断固とした方向性を持つ環境を構築すること、そして、個人の関与を促し、関係性を高めることが必要、という議論が繰り広げられました。
COVID-19が働く女性に与えた影響に対する喫緊の対応が求められています。コンサルティング会社マッキンゼーと、女性の社会進出を支援することを目的として創業されたNPO法人LeanIn.Orgによる調査「ウーマン・イン・ワークプレス2020」では、女性の4人に1人が、パンデミックの影響でキャリアダウンを経験したか、離職を検討したという調査結果が出ています。このデータは、パンデミックが終息した後も、女性や育児をしながら働く人たち、介護をする人々をサポートし、支援していくことの重要性を示しています。COVID-19の流行により、従業員、特に育児をしながら働く人たちは、ワークライフバランスを実現するための柔軟な支援を求めていることが明らかになりました。タケダでは、コロナ禍における多様な働き方を支援しています。福利厚生を拡充し、従業員が育児をする時間を確保し、同僚と協力しながらより柔軟なスケジュールで業務を遂行できる環境整備に努めています。
女性活躍を推進する国内の従業員ネットワーク「はなみずき」では、エグゼクティブチームから2名のスピーカーを迎え、ジェンダーを問わず、自分らしく働きキャリアを作る秘訣をテーマに、トークイベントを開催しました。チーフ グローバル コーポレート アフェアーズ オフィサーの大薮貴子は、「自分らしいキャリアの一歩は、自分を信じること」とし、周りからの期待値や文化的背景の違いから来るギャップを理解し、受け止めながらも、自分の個性を失わず、積極的にコミュニケーションをとる大切さについて、体験談を交えながら紹介しました。コーポレート ストラテジー オフィサー&チーフ オブ スタッフ*の古田未来乃は、「多様性が私たちにもたらすもの」というテーマで話しました。日本で育ち、それほど英語が堪能でない状態で海外勤務を始めたころの自身の経験談を交えながら、多種多様なバックグラウンドを持つ同僚と共に、自分らしく働きながら結果を出していくためのマインドセットを紹介しました。
*役職はイベント開催時のもの