CoVIg-19 Plasma Alliance(以下「CoVIg-19アライアンス」)は、このたび、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が出資し実施した臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」において、評価項目を達成しなかったことをお知らせします。臨床試験において安全性の重大な懸念は認められませんでした。
本試験は、重篤化リスクのある成人のCOVID-19入院患者さんに対して、抗コロナウイルス高度免疫グロブリン製剤(H-Ig)(本アライアンスでは「CoVIg-19」)を、レムデシビルを含む標準治療に追加投与した際の、疾患進行のリスク低減を評価することを目的としていました。現在も解析は継続中であり、NIAIDおよびINSIGHT Networkは試験の詳細結果を近く発表する予定です。
CSL BehringのExecutive Vice President, Head of Research and Development and Chief Medical OfficerでありCoVIg-19アライアンスの共同リーダーであるBill Mezzanotteは、「今回の試験結果は残念なものでしたが、この研究に業界として自発的に取り組み、協力して推進したこと、そしてこのプログラムが、この難しいウイルスに対する理解や、患者さんの治療への理解を深めることに貢献できたことを誇りに思います。この開発プログラムに着手して以来、そしてパンデミックを通じて、私たちは科学的研究から多くのことを学びました。重要なことは、私たちは製薬企業として、人々の健康のために迅速に協力する不屈の精神と能力を有していることを学びました」と述べています。
武田薬品工業株式会社(以下「武田薬品」)のPlasma-Derived Therapies Business UnitのPresidentであり、CoVIg-19アライアンスの共同リーダーであるJulie Kimは、「公衆衛生に恩恵をもたらし、複雑な分野での理解を深めることを目的に、各自がリソースを持ち寄り、各々の負担でインフラや血漿に関する専門知識を結集させられたことを誇りに思います。この1年間、COVID-19の解決策となりえる治療薬を開発、製造するための困難な状況の中で、我々をサポートしてくださった製薬企業外の組織を含め、昼夜を問わず取り組んでいただいた皆さんには、非常に感謝しています。また、我々の研究を可能にするために血漿を進んで提供してくださったCOVID-19から回復された方々、快く試験に参加してくださった患者さん、そして我々の取り組みに柔軟な姿勢で支援し協力してくださった規制当局や政府機関にも心からの感謝を申し上げます」と述べています。
ITAC試験の結果を受けて、CoVIg-19アライアンスの取り組みは終了いたします。世界中の組織が参加したこの1年間の協働の取り組みにより、製薬企業内外の関係を強化し、科学的根拠と必要性に基づいた実用的な規制に向けて新たな視点が得られました。そして、緊急の公衆衛生上のニーズに対処するための今後の協力の機会に向けて、明確に定義され、かつ、法的に準拠した枠組みが提供されました。
ITAC試験について臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」は、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が実施する国際多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験です。本試験は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する、抗ウイルス剤であるレムデシビルとSARS-CoV-2を中和する高濃度の抗体を含有する抗コロナウイルス高度免疫グロブリン静注製剤(H-Ig)から成るレジメンの安全性、忍容性および有効性を評価します。H-Igに含まれる抗体は、COVID-19から回復した健康な人々から提供された血液の液体成分である血漿から採取されたものです。
NIHが設立したINSIGHT Networkを通じて、米国および5大陸にわたる10ヵ国の63施設で、約600名の患者さんが試験に登録されました。発症後12日以内で、生命を脅かすような臓器障害や終末臓器不全のないCOVID-19入院患者を対象としています。治験に使われるH-Igは、CoVIg-19アライアンスよりCSL Behringおよび武田薬品のほか、Emergent BiosolutionsおよびGrifolsの4社から提供されました。ITAC試験の詳細については、
ClinicalTrials.govをご覧ください。試験の識別番号は
NCT04546581です。
CoVIg-19 Plasma Allianceについて
COVID-19パンデミックとの闘いに対処するため、COVID-19による重篤な合併症のリスクを有する人を対象とした血漿分画製剤の開発を目的に、CoVIg-19 Plasma Alliance は2020年4月に結成されました。CoVIg-19アライアンスでは、血漿分画製剤で世界をリードする製薬会社が集まり、COVID-19による重篤な合併症のリスクを有する患者さんの治療を目的としたノーブランドの抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤の開発に取り組みました。高度免疫グロブリン製剤(CoVIg-19)は、COVID-19から回復した方から提供された血漿から精製され、一定量かつ高濃度の抗体を含有する高品質の医薬品です。
CSL Behringと武田薬品が共同で結成したCoVIg-19アライアンスには、BioPharma Plasma、Biotest、GC Pharma、LFB、National Bioproducts Institute、OctapharmaおよびSanquinも参加しました。 また、ビル&メリンダ・ゲイツ財団がアドバイザーとして支援しており、MicrosoftがCoVIg-19アライアンスのウェブサイトやドナー募集のための「Plasma Bot」などの技術を提供しました。PallやUber Healthなどの組織も現物支援などでCoVIg-19アライアンスに協力しました。
CoVIg-19アライアンスは、米国においてCOVID-19から回復した多くの方々から血漿を提供してもらうための協力体制である
「The Fight Is In Us」キャンペーンにも参画しています。COVID-19から回復した方、もしくは回復した方をご存知の方は、
TheFightIsInUs.org にアクセスのうえ、簡単な自己診断ツールを使用して血漿の提供に適格かどうかを確認し、近隣の血液または血漿採取センターを確認することができます。
以上