タケダの代表取締役兼 CEO クリストフ・ウェバーは、2019年10月28日から29日に東京で開催された第21回 日経フォーラム「世界経営者会議」で講演した。日本経済新聞社が主催するこのフォーラムは、アジアで最も権威のある会議の1つであり、毎回世界中の企業幹部や知識人が参加している。
順調に進展するシャイアー社との統合
タケダは国内で過去最大規模となったシャイアー社買収を2019年1月に完了、9か月が経過した今、統合の進捗状況を中心に議論が展開された。 「現在は、まだシャイアー社統合の最中にあるものの、ビジネスの勢いは失われていません」。シャイアー社の従業員の94%が、すでに「One Takeda」の新たなチームに割り当てられていることについてもウェバーは言及した。
この買収により、2017年に策定したタケダの戦略的目標が補完され、加速することで、グローバルでの競争力が増したと言える。ウェバーは、革新的なバイオ医薬品開発に関連する研究開発のコストがかつてないほど高騰していることを踏まえ、この統合が今後グローバル製薬業界で成功するために必要な規模を得るために必須であったことを強調した。 また、特に希少疾患領域におけるタケダの製品パイプラインが拡大し、いまだ有効な治療法がない疾患への医療ニーズに応えることができるようになったと語った。
共通のビジョンを持つ多様な経営陣
タケダのグローバル化は、エグゼクティブチームの多様さにも反映されている。18人のチームメンバーは11の異なる国の出身者で構成されている。ウェバーは「日本人幹部が少数派になったのでは?」という問いに対し、偏りのないグローバルなチームであると答え、共通の目的、戦略、ビジョンを共有していることを強調した。また各国の幹部たちは1週間、共にタケダの長い歴史と価値について学び、そこで得た見識を自国に持ち帰っている。
ウェバーは、シャイアー社が比較的歴史の浅い企業であったために、組織全体に深く根ざした価値が育っておらず、従業員の多くが「確固たる企業文化」を持つタケダに加わることを楽しみにしているようだと述べた。
シャイアー社の経営陣が合流する中、ウェバーは、多様性が重要である一方で、リーダーはタケダの価値を完全に継承する必要があると強調した。「今日のタケダのような企業を牽引するには、グローバルでの経験が必要、早ければ早いほど良いでしょう。」。日本の伝統的な年功序列とは対照的に、タケダはマネージャーの迅速な成長を促し、キャリアの早い段階でグローバルでの経験を積ませている。
長期的で、価値に基づいたグローバルな見通し
ウェバーは今後の課題として、医薬品アクセスの重要性を取り上げた。各国はそれぞれ独自の医療制度を持っているため、タケダは開発した革新的な医薬品を現地市場に導入する際に、これを必要とする患者さんが入手可能な価格で医療従事者が提供できるよう、柔軟性の高い「ローカル中心」のグローバル組織を構築していると説明した。
進行中の統合や短期的な結果を求める一部の投資家からのプレッシャーを受けながらも、それにより、10~20年先のビジネスに影響を与える意思決定に基づく長期目標がぶれることはない、とウェバーは強調した。その例として、タケダはノーベル賞受賞者である山中伸也教授が主導するiPS細胞技術の臨床応用に向けた研究において、10年間に渡るパートナーシップにて共同研究プログラムを行っている。
グローバル化を推進する中、ウェバーは、タケダの文化と価値がその中心にあることを明言した。 「我々の価値は、自らの考えの道しるべであり、この価値を保ち、タケダを1つのファミリーにすることが非常に重要です。」と述べた。