「グローバル化は選択肢の一つではなく、必須事項なのです」
タケダの社長兼最高経営責任者(CEO)クリストフ・ウェバーは、「
日経ビジネス50th 記念フォーラム」で熱意あふれる講演を行い、グローバルな企業市民であり続けることの重要性を強調した。1969年創刊の『日経ビジネス』は、日本の経営層やビジネス・リーダーに向けた最も権威ある雑誌の一つである。約850人が参加したこの記念イベントは、同誌の長年にわたるプレゼンスと、日本のビジネス市場に多大な影響を与えてきた功績を讃えるものだ。
このフォーラムにてウェバーは、タケダの“日本最大”と言われる買収、真にグローバルな研究開発型バイオ医薬品企業となることの決意、複雑化する文化的、社会的課題をどのように克服したのかを語った。
グローバルなマインドセットを構築する
業界の劇的な変化、海外市場の成長、および研究開発費の急激な高騰により、グローバル化の必要性は増大している。タケダが競争力を維持するためには革新的な医薬品の開発に注力し、世界に力強い基盤を作ることが必要だ。
タケダは今日では約80カ国に拠点を持つ真のグローバル企業となり、同時に日米双方の医薬品業界でリーダー的立場を担っている。このようにグローバルでのプレゼンスを増すことで、世界中の患者さんに必要なケアを提供する、という使命を果たし、「常に患者さんを中心に考える」という経営の基本精神を実現することが可能になるのだ。
コアバリューを守り続ける
タケダの成功を語る中で、「タケダはどうあるべきか?」を自らに問い続けることの重要性をウェバーは強調した。「人と同じように企業にも個性があり、これは時間の経過とともに複雑化していきます。当社は238年の歴史がありますが、世界規模のバイオ医薬品業界のリーダーへと変貌を遂げる際に羅針盤となっているのが、創業時から受け継いできた不変の価値観です。それは『誠実・公正・正直・忍耐』であり、私たちが『タケダイズム』と呼ぶコアバリューです」とウェバーは語った。
タケダ初の外国人CEOというユニークな経歴を持つウェバーは、自社の成長とグローバル化を加速するために、タケダイズムという価値観を守り続けることが極めて重要だと認識している。「タケダイズムは当社のDNAです。それは企業文化もしくは思想とも言えるかもしれません。我々にとって常に自らの存在を問いかけ、何を成すべきかを定義する指針なのです」
かつてない規模で実行されたシャイアー社買収の後、このコアバリューは、統合からわずか数カ月で全社に浸透していった。「自分たちの中心にいるのは、常に患者さんである」という明確な事業目的とともに、コアバリューは5万人を超える優秀で多様な従業員たちを結びつけたのだ。
世界規模で人材育成を進める理由
世界中の従業員に「タケダイズム」の実践を推奨し、裁量権を与えることの重要性と、さらにこのDNAを次世代へ受け継ぐことの必要性についても強調した。「未来の成功は、次のリーダーたちが担っているのです」そうした理由から、「グローバル・インダクション・フォーラム」や、ウェバー自身が世界中から幹部候補を集めて毎年行う「プレジデント・フォーラム」といった、世界規模の人材育成プログラムにタケダは投資している。
「『タケダはどうあるべきか?』という問いの答えについて、私は、全従業員を結びつける『不変の価値観』そのものであると考えます。タケダという企業がいかに発展・拡大しても、患者さんのために正しい行いを続ける、という想いが一人ひとりのモチベーションになっているからです」
ウェバーはこのように述べ、講演を締めくくった。