2010年3月、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(グローバルファンド)を通じてアフリカにおける保健医療人材の育成・強化を図る寄付プログラム「タケダ・イニシアティブ」を立ち上げました。
現在、三大感染症といわれるエイズ、結核、マラリアにより、世界で年間約数百万人の尊い命が奪われています。途上国においては、その発展・成長に対する大きな阻害要因ともなっており、これらの感染症への対策が、国際社会の重要な課題と位置付けられています。特にアフリカでは、保健医療人材の不足が非常に深刻であり、感染症を克服するために必要な保健サービスの提供に支障を来しています。
「タケダ・イニシアティブ」は、持続可能な開発目標(SDGs)や国連グローバル・コンパクトなど国際的なフレームに基づき、グローバルヘルスおける重要な課題の一つである「三大感染症の蔓延防止」の具体的な取り組みとして位置づけています。
■寄付金額
年間1億円(2010年~2019年までの10年間継続)
■内容
世界エイズ・結核・マラリア対策基金が推奨する以下の3ヵ国のプロジェクトのうち、保健医療人材の育成・強化を中心とする保健システム強化の支援
*世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド): 日本国内における寄付の受け入れ機関は、グローバルファンド日本委員会事務局である(公財)日本国際交流センターとなっております。
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)は、エイズ・結核・マラリア対策のために資金調達、資金供給を行う機関で、スイス・ジュネーブに拠点を置いています。2000年のG8九州沖縄サミットで日本政府が感染症対策を主要課題としたことが発端となり、2002年にコフィ・アナン前国連事務総長とG8諸国の呼びかけにより設立されました。これまでに、世界100以上の国と地域に年間約40億ドルの支援をしており、それらの事業により、1100万人のエイズ患者と1740万人の結核患者に治療が提供され、マラリア対策として殺虫剤浸漬蚊帳が7.95億張提供されるなど、各国の感染症対策を支える重要な資金源となっています。
アフリカで最も経済力があり、人口も最多であるナイジェリアは、HIVと結核の疾病負荷がアフリカ全土で2番目に高く、結核、HIV、多剤耐性結核の高蔓延国に指定されています。また、HIVの母子感染や妊婦と乳幼児の死亡率においてもアフリカで最も高い率を記録している国の一つです。HIV/エイズ関連サービスのカバー率が低い事が大きな課題として残っており、疾病の予防強化、新規感染の発見と治療のさらなる強化が急務となっています。
マラリアは、タンザニアでもっとも深刻な疾病で、人口の約90%にあたる4400万人が季節性マラリアの流行する地域に住んでいます。これまでの努力でマラリア負荷を相当減少させることに成功していますが、未だに大きな公衆衛生上の課題であり、外来患者の40%、また5歳未満の子どもの死因の36%を占めています。タンザニア政府では、2020年にはマラリア罹患率を1%以下になることを目標に挙げています。
ケニアは、世界全体の約80%の結核患者を抱える高蔓延国30か国の一つです。結核は、ケニアにおける最大の死因の一つであり、特に女性と子どもにおいて、その傾向が顕著です。政府が実施する結核対策プログラムや国際援助を受け、結核の蔓延は年々減少傾向にあり、1990年から2014年の間に、結核の新規発見・診断率は30%から80%にまで著しく改善されましたが、技術的にも財政的にも継続的な援助は必要で、特に検査用の試験設備の拡充や多剤耐性結核の治療強化が大きな課題となっています。