タケダ・ウェルビーイング・プログラムを通じて、私たちが『特定非営利活動法人しぶたね』と出会ったのは、2009年の第1期助成スタート時のことです。理事長の清田悠代さんは、当時を振り返り「最初は、ありがたいという気持ちと同時に、活動できていることだけでもありがたかったので遠慮もありました」と話します。
特定非営利活動法人しぶたねは、清田さんが、病気をもつ子どもたちのきょうだい(シブリング/Sibling)の支援を目指し、社会福祉士が中心になって立ち上げた団体です。清田さんが中学生のとき、心臓病を抱える弟さんが入院する病院で見た光景が今の活動の「たね」になっていると教えてくれました。
「感染予防のために病棟に入れない小さなきょうだいたちは、保護者の方が入院中のお子さんに面会する間ずっと、何もない廊下にぽつんと座り、何時間も過ごします。2、3歳の女の子が母親を求め泣きながら、それでも病棟と廊下を隔てる扉の先に行ってはいけないことを理解しているので扉を開けようとはせず、ただ泣きながらじっと張り付いていました。こんな小さな子が泣いているのに誰も声をかけていない現実にショックを受けました」
病気をもつ子どもたちのきょうだいたちに「応援してくれる大人がいるよ」と伝えたい——それが当時、清田さんが抱いていた想いです。その想いに応え、タケダ・ウェルビーイング・プログラム第1期の助成により、きょうだいが親御さんと触れ合う「きょうだいさんの日」の開催、さらに直接会えないきょうだいのために作成した「きょうだいさんのための本」発行を実現しました。
「きょうだいたちは、大変そうな親御さんに遠慮して甘えづらかったり、親御さんも病気のあるお子さんのケアに追われる日常だったりします。」と清田さんは語ります。そして「この子、こんなに可愛い顔で笑うんですね。普段ゆっくり見ることができないから」という親御さんの感想を教えてくれました。
「きょうだいさんのための本」は増刷を重ねて8,000冊が発行され、病院や保健所、関連団体、支援学校などにも広く配布されました。現在も多くの人々の手に取られ、団体の認知度と組織力を高めることにつながっています。
第2期の助成では、きょうだい支援に取り組む仲間を増やし、ネットワーク化を図りました。「シブリングサポーター研修ワークショップ」を全国で28回実施し、816名のシブリングサポーターを育成。彼らがそれぞれの地域で新たに活動を立ち上げるなど、きょうだい支援の輪を全国に広げました。さらに、きょうだい支援に関わる各分野のリーダーによるネットワークを構築することで、課題の共有や情報発信の連携を強化することができました。
第1期(2009年、2010年、2013年)
病気の子どもと共に頑張っている「きょうだい」の支援とサポート体制の強化、および10周年プロジェクトの実施
第2期(2016年、 2017年、 2018)
病気の子どものきょうだい支援を広げるためのシブリングサポーターの養成